バリでグリーンスクールを設立し社会問題に取り組んでいることで世界的に知られるジョン・ハーディーさんが、産廃処理に取り組む石坂産業(埼玉県)を訪問した。
バリのグリーンリーダーとして知られる、ジョン・ハーディーさんも「驚いた」という石坂産業の分別処理施設
ゴミ問題はバリ島だけでなくインドネシア全体にとって最大の問題の一つ。近年目覚ましい発展を遂げているインドネシアだが、未熟な社会制度設計や国民の問題への意識の低さもあり、その深刻さは増す一方だ。ハーディーさんはそうした状況を憂い、バリ島に竹でできた学校グリーンスクールやさまざまな関連事業を設立した。教育や観光を通して社会問題に向き合い、地域を巻き込み社会全体で解決していこうという理念を掲げる。そんなハーディーさんが注目したのが、日本の産業廃棄物処理事情。世界の最先端を行く産廃業者として知られる同社を訪れた。
埼玉県入間郡三芳町にある石坂産業は、かつて世間を騒がせた「所沢ダイオキシン報道」で、土壌汚染の「悪者」として矢面に立った経験を持つ。後に、それはぬれぎぬだったことがわかったが、産廃業者への偏見や地域で失った信頼は取り返しのつかないほど大きなものだった。
同社は典子社長の代になり、産廃事業のイメージを打ち破るほどの大きな転換を図る。人目を避け、社会から隠された存在から、誰に対してもオープンで地域が誇るような存在へ。経済活動で不可欠である産業廃棄物処理とリサイクル事業を、「必要悪」ではなく、むしろ地域社会の中心的存在にすることを目指した。
そのコア事業の一つが「里山再生」。同社のある旧三富地域は、江戸元禄期に川越藩主柳沢吉保と荻生徂徠によって開墾された三富新田で知られる。居住区域・農地・雑木林が各区割り内にバランスよく配置された土地設計は、今でいう「エコシステム」。里山を有効活用し、実り多き循環型社会を目指したものだった。
だが近年ではその機能が失われ、同社を囲む雑木林も人の手が入らず荒れ放題の状況。環境が荒れると人心も荒れる。そこで同社はその雑木林を再生・保全することにより、地域への誇りと社会のつながりを再構築し、人々に環境負荷の少ない循環型社会への意識を持ってもらえるよう動き出した。
地域の人たちのみならず、日本各地、そして海外からもその試みは注目され始めている。同社のプラントや里山には毎日多くの見学者が訪れ、「産業廃棄物処理業への固定概念を吹き飛ばされ、驚嘆の声を上げ、そして笑顔に包まれる」という。いつもはグリーンスクールに多くの見学者を迎える立場のハーディーさんも、その一人。今回の訪問でその取り組みに強く共感したハーディーさんは4月に再来日し、同社が運営する里山テーマパーク「三富今昔村」で開催される「里山EXPO」で講演を行うことが決まっている。
先端を行く産廃処理事業者とバリのグリーンリーダーとの出会いから生まれるケミストリーに注目が集まる。深刻なゴミ問題に悩むバリにとって、解決への糸口の一つになるのかもしれない。