バリ島アルマ美術館（Jl. Made Labah, MAS,Ubud）のロビーで現在、ウブド出身の画家クトゥッ・ブディアナさんと日本人木版画作家の小松嘉門さんの二人展が開催されている。

ブディアナさんの作品「Whirling」（200×370センチ）

　ブディアナさんは世界各国で個展を開き、日本にも熱心なコレクターがいるとされる画家。伝統的なバリ絵画の枠を超えたスタイルで生と死、男と女、光と闇などの2元性や魔界や地獄絵などを描くまれな存在として一目置かれている。

　日本とバリを行き来しながら長年活躍を続けている小松さんは、洋画家だった父親の影響で幼い頃から絵を描く環境にあり、木版画も教わったが当時は嫌いだったという。しかし中学へ上がるころに父親がくれた良質な彫刻刀で彫ったところ思い通りの線が削れることに感動して以来、木版画にのめり込んだという。大学を卒業後、造形の仕事をしていたある日、バイク事故で左手を損傷し失意のどん底にいた小松さんを救ったのは樹齢500年のケヤキの木だった。どんなに切り落とされてもなお、そこからまっすぐに何本もの枝が伸びているその生命力の強さに衝撃と感銘を受け、木版画作家としての再出発が始まった。

　バリ島の寺院には大きなご神木が多い。古くからバリの人々によって大切に祭られている霊木はバリ島の移り変わりを静かにたたずみ、見守っている。そんな巨木に魅力を感じる小松さんは描きたい被写体に出合うと、まずその霊木に祈りをささげ絵を描かせてもらうことに対し許可を頂く。霊木をきちんと敬い、真摯（しんし）に向き合い、何日も通い描き続けることで霊木とつながりながら描く緻密な描写のスケッチが完成する。

　ブディアナさんの作品は目に見えない陰の神秘的な世界を視覚化し表現しているのに対し、小松さんの作品は目に見える霊木を緻密に描写することで、それらが発する神秘的な世界を視覚化している。

　開館時間は9時～18時。入館料は15万ルピア。4月5日まで。