ごみのリサイクル率14年間連続日本一の鹿児島県大崎町の視察団が2月20日~22日の3日間、JICA草の根技術協力事業の技術移転プロジェクトのためバリ島を視察訪問した。
モデル地区候補地の中間ごみ処理施設で大崎システムで作られた堆肥をチェック
バリ島は世界有数の観光地だが、深刻なごみ問題に直面している。焼却施設のないバリ島で分別されていないごみがそのまま埋め立て処分場へ運ばれているため、観光地も多く人口密集地のバドゥン県にある処分場は既に満杯状態にある。そうした危機的状況の打開策としてバリ州政府からの依頼を受け、JICA協力の下、ごみの減量化に取り組んでいるのが、14年間連続ごみのリサイクル率日本一の実績と経験を持つ鹿児島県大崎町。
バリ州と同じ焼却施設のない同町は「混ぜればごみ、分ければ資源」を合言葉に、行政、企業そして住民が一丸となり、20年以上にもわたり、ごみ減量化に取り組んでいる。そのノウハウを使った技術移転プロジェクトのフェーズ2が2022年に始まった。昨年7月に大崎町役場住民環境課職員とリサイクルセンターの職員から成る「大崎チーム」が視察訪問し、11月にはモデル地区候補地から指導者となるための8人の人材を大崎町に派遣し1週間の研修を行った。
今回は大崎町の千歳副町長やジャカルタのインドネシア廃棄物・有害物処理事務総省から職員2人も視察に同行。民間のリサイクル業者「エコバリ」を視察した他、モデル地区の現状を把握するため候補地のあるギャニャール県とクルンクン県の県知事のほか行政関係者らとの意見交換を行ったほか、数箇所の中間ごみ処理施設や集会場を訪問し、大崎システムの堆肥作りやごみの回収方法などの状況を確認した。併せて、プロジェクトに協力する夫人会メンバーのヒアリングや、実際に住民の家に訪問し家庭ごみの分別方法を確認するなどした。
連日同行したバリ州政府のドウィ環境林業課長は「ごみの減量化の取り組みとして州政府は2019年に700以上ある島内全ての村に1カ所ずつ中間ごみ処理施設を設置することを決め、現在は243の村で既に稼動している。住民に対しても家庭からのごみの分別の徹底を促している。一筋縄ではいかないが、この仕組みがきちんと構築できれば埋め立て処分場の延命化につながり、バリ島も美しい島に戻る。その「最も有効かつ実用的なシステム」として大崎システムに期待が集まる。まずはモデル地区で集中して指導し、そして序々にバリ州全体へ広げていく。これがバリ州モデルとなり、いずれはインドネシア全土へ広げられるようにしていきたい」と話す。
サブプロジェクトマネジャーである大崎町役場住民環境課の竹原さんは「大崎システムは、ごみ減量化を、低コスト、かつ持続可能な取り組みとして日本で最も優れているシステムと評価されるが、住民の理解と協力なしでは成り立たない。バリ島のごみ問題は深刻だが、住民が家庭でごみの分別を行えば必ずうまくいく住民参加型プロジェクト」と自信を見せる。