バリ最大の悩みともいえるゴミ問題を解決するため、州政府は1月26日、資源リサイクル率日本一を誇る鹿児島県大崎町と連携した人材育成プログラムを本格始動すると発表した。
JICA協力の下で昨年夏に始まった資源循環型まちづくり技術支援事業は、ゴミ処理やリサイクル事業、有機農業などに携わる指導的立場の人々を積極的に相互派遣し、バリへの技術協力だけでなく、広く意識改革を図ることを狙いとしている。昨秋は16人がバリから大崎町に派遣され、ゴミの収集やリサイクル過程、有機廃棄物からの堆肥作りや有機農法などの研修を受けた。大崎町からもゴミ処理事業者や有機農家がバリへ赴き、バリの廃棄物収集・分別担当者や普及指導員、地域住民、農業従事者たちへ講習を行った。
かつて大崎町はバリ同様に増え続けるゴミと埋め立て地不足に悩み、町民一体となってこの問題を解決してきた歴史を持つ。ゴミの分別効率化とリサイクル意識を町民一人一人が徹底することにより、埋め立てゴミを約8割も減らすことに成功。5年も持たないといわれていた最終処分場の余命は40年以上延び、そのうえ1人当たりのゴミ処理費用負担額は全国平均の半分まで減少した。環境省「一般廃棄物処理実態調査結果」において資源リサイクル率ナンバーワンの自治体に8年連続で輝き、少ない予算で最大効果を達成した手法は「大崎モデル」として知られている。
同町は2012年より西ジャワ州デポック市で住民参加型の資源リサイクル事業を行い、大きな成果を上げたことにより今回のバリ州とのプロジェクト実施に至った。急激な人口増加と生活環境の変化により、バリのゴミは増大の一途。もはや観光客の目からも隠しきれない状態で、今後観光・不動産業にも支障をきたしかねない。そうなると、島の経済にも大きなダメージとなるだろう。
圧倒的に足りておらず、あってもほとんど機能していなかった中間処理施設の重要性を広く知ってもらい、ほぼ全てのゴミが無分別で最終埋め立て地に運ばれている現状を改善するとともに、ゴミを出す生活者一人一人の意識を変えていくことがバリの喫緊の課題だ。地域住民がゴミを持ち寄り、業者にまとめて買い取ってもらう「ゴミ銀行」もバリで普及し始めている。生ゴミ、紙類、プラスチック、瓶、缶、木材、金属類など、最低限分けるだけでも最終処分場に持ち込まれるゴミは減っていくだろう。ゴミの大半を占める有機ゴミから良質な堆肥を生産することができれば、ゴミ処理の大幅なコスト削減も期待でき、農業や土壌に対する島民の意識も変わってくることも期待される。